つくし文具店

文具について

文具好きだから文具店をやっていると勘違いされることがよくあります。ぼく自身は、家が文具店だったことで、小学生の頃からお金をだして文具を買う必要がなく、文具に関してそんなに思い入れがあったわけではありません。

いざ、つくし文具店のあとを継ぐことになって、「文具」というもののあり方を考えるようになり、文具の可能性に気がつきました。通常、文具は、仕事の道具であり、事務用品でもあり、主にオフィス空間で使われることを前提にしていて、機能的なことを重視しています。

けれども、実際には、働き方が変わったせいか、文具を暮らしの中で使うことが増えているように感じます。家具や食器と同じように暮らしの時間になじむような文具がもっとあってもいいのではと考えるようになりました。

「文房具」という言葉の「房」という字に「書斎」や「空間」を示す意味があり、空間にしばられる道具としての「文房具」という言葉は使わずに、「文具」という言葉に統一しています。「文」という文字の意味をもっと掘り下げていきたいと考えています。

それから「文具」と「画材」。そして「文具」と「玩具」の違いにも注目しています。それぞれの境界線に、何か新しいヒントが隠されているような気がします。画材や玩具といった理屈ではない感覚的な文具がもっとあったら創造力が刺激されるような気がしています。

勉強や仕事の道具としてだけの文具ではなく、暮らしの中で、創造力を活かすための道具としての文具について試行錯誤していきたいと思います。

オリジナル文具のデザイン

DRILL DESIGN ドリルデザイン
林 裕輔

つくし文具店のオリジナル文具の開発は、話はでていたものの、店主からの依頼で製作したわけではなく、ドリルデザインから自主的に提案したものでした。
オープンしてから半年くらいたった頃、あまりお客さんが来ない状況が続き、駅から遠いつくし文具店にわざわざ来てもらうには、ここでしか買うことが出来ない質のいいオリジナル文具の必要性を感じていました。

つくし文具店らしいノートをオープン以来ずっと考えていて、ようやくアイデアがまとまってきました。開発にはお金もかかるし、メーカーになると商品管理や細かい仕事が増えるので、まだ難しいかなーと考えながらも、ダメモトで店主に見せてみました。すると「ノートをつくるなら、鉛筆も一緒につくろう」という意外な答えが返ってきました。そこから、オリジナルの文具を年に一つか二つずつ作っていこうと、話が一気に盛り上がりました。

つくし文具店オリジナルの「つくしモノ」にはわかりやすいシリーズコンセプトは存在しません。何年も何十年も同じデザインでつくり、販売していくにはコンセプトやカタチの面白さより、熟考された誠実さが求められるのだと考えています。道具としての機能的な新しい工夫を考え出し、それを適した素材と形に落とし込むという当たり前のことを、何の装飾も加えずにやっていきます。
派手さはありませんが、使うとその工夫がだんだん判るような文具にしたいと思っています。それには年に一つか二つ、というペースがちょうど良いと思います。