つくし文具店

店主雑記

第3回 日直のはじまり

「つくし文具店」には、大きな黒板があります。
これは、ドリルデザインが
「中学校前にある文具店だから、第2の教室みたいになったらいいですよね」
という考え方のもとにつくられました。

その時には、黒板がこんなにもその後の「つくし文具店」のあり方を
変えていくとは、予想もしていませんでした。

1年目のつくし文具店は、ぼくともうひとりが交替で店番をしていて、
金曜日と土曜日の週二日の営業でした。
6月にオープンして冬になり、あまりにもお客さんがこない寒い日に、
「たまにしか店が開いていないからお客さんがこないのかも」
とぼんやり考えながら、黒板を眺めていた時です。

「そうだ。黒板があるんだから、日直制にして、店にいてくれる人を募集しよう」
と変なことを思いついてしまいました。
そもそも売上げが少ない店なので、アルバイトを雇う余裕はありません。
ちいさな店に興味をしめしてくれて、
週一回、一日5時間、無償で日直(店番)してくれる人を探すことにしました。

「つくし文具店」のウェブサイトで呼びかけてみたところ、
10人ぐらいの人から連絡がありました。
近所の主婦で子育てが一段落したので社会との接点を求めていた人、
結婚して会社を辞めて少し時間に余裕ができた人、
ものづくりが好きで自分でも何かつくっている人などです。

こうして、「つくし文具店」の日直制がはじまりました。
日直制は、話題になり、やりたい人が増えていきました。
基本的には、やりたい人は拒まない方針だったので、
少しずつ人数が増えていき、一時は40人以上になりました。

日直制をはじめたことで、
家でも職場でもない、興味や関心でつながる居場所を
欲している人がこんなにいることを実感しました。
そして、そういう人たちがつながっていくことで、
新しい何かが生まれてくるような気がしてきました。

大きな黒板からはじまった日直制。
今では、「つくし文具店」になくてはならないものになりました。

|