つくし文具店

店主雑記

第11回 「つくし文具店」10年で変わること

どうやら自分にとって、10年が一区切りみたいだ。
小学校5年生の10歳の時に、何かが変わり、
大学生の20歳ぐらいに、デザインはしないと決めた。

最初に勤めた会社に10年。転職して10年。
サラリーマンを辞めて、個人事業を10年。
そして、昨年は、独立10年目にして会社を設立、同時に、大学の教員にもなった。

10年という単位には、なんとなく曲がり角に感じる。
で、今年は、「つくし文具店」がリニューアルオープンして丸10年になる。
たぶん、大きな変化の年になるのだろう。

2004年に会社を辞めて、とくにやることもなく、
実家のある国立駅近辺で何かやりたいと考え、
ドリルデザインの林さんの後押しもあり、
しばらく物置になっていた「つくし文具店」を
2005年にリニューアルオープン。

最初のうちは、週一日のペースで店番をしていた。
自分がこども時代を過ごした場所に身をおくことで、
サラリーマン時代の20年が、いかに自分を見失っていたのかがわかる。

人がこない日々が続き、どうしたらいいのかを考え、
思い切って日直制や、オリジナル文具をはじめ、
知っている人の展覧会を開催して、少しずつ認知を広めていった。

デザイナーとのつながりを活かして、
隔週で文具教室を開催し、わざわざ、足を運んでもらった。
たぶん、強いつながりを意識していた。
単なる文具店には、したくないと考えていた。

そして、日直制と文具教室をつなげ、
「ちいさなデザイン教室」という試みをはじめる。
「つくし文具店」ならではのスタンスが少し見えてきた。

そんな「つくし文具店」の10年を振り返ってみると、
変わらずに続けていくことと、少しずつ変化していくことの
バランスが大事なことがわかってくる。

先が見えてしまうと、つまらなく感じる。
10年前に「つくし文具店」をはじめた時には、
まさか今のようなカタチになっているとは思いもしなかった。

たぶん、これから10年後の「つくし文具店」も
思いもしないカタチになっているのだろう。
やりたいけど、まだまだ、できないこともあるし、
考えてみもしなかったことを、突然に思いつくこともある。

つながる くらしと しごと
つくると つかうの関係
住宅街を開く店
暮らしに使う文具
玩具と文具の境界
画材と文具の境界

文具は、頭の中を「みえる化」して、
自分でも気がつかなかったことに気がつく道具なのかもしれない。
個人では考えられない何かを創造し、共有することもできる。

どうやら「文具」には、まだまだ可能性がたくさんある。
デザインと文具の関係をもっともっと深めて、
これまでになかったような文具と使い方を考えてみたい。

そして、「つくし文具店」のまわりから、郊外住宅地が変わっていく。
開かれて、広がって、つながって、
未来に続く、そんな文具店になれたらいいと思う。

10年後が楽しみです。
どうぞよろしくお願いします。

|