第5回 地域を開く店
つくし文具店は、駅から離れた住宅街の中にあります。
中学校が近くにあるので、昔は、中学生が立ち寄る場所でした。
そして、近所に住む人たちも文具を買いに来たり、
買い物帰りに立ち寄っておしゃべりするような場所でした。
つまりは、地域の人が利用する「地域に開かれた店」であり、
地域のコミュニティスペースとして機能していました。
1980年代ぐらいから、スーパーができ、コンビニができ、
文具を街のちいさな文具店で買わなくなり、
店で買い物する時に、店の人と会話することも少なくなり、
地域のコミュニティがどんどんなくなっていきました。
ものを売る上で、利便性や効率性が追求され、
コミュニティスペースとしての店の機能は、失われていきました。
おふくろが店を閉めたのが1990年。
コミュニケーションをとりにくい子どもや親が増えてきて、
店をやっているのが楽しくなくなってきたのが原因のひとつです。
ぼくがリニューアルオープンしたのは、2005年。
閉店している間に、バブル経済がはじけ、
暮らしを根底から見直す機運が生まれていました。
新しい店は、「地域に開かれた店」というよりも
「地域を開く店」にしたいと思いました。
住宅街のように住む人しかいない地域ではなく、
仕事や店もある開かれた地域にしたいと願いました。
昔、中学生だった人が遠くから訪れるような
家でも会社でも学校でもないような場所。
大人のコミュニティスペースができないかと考えました。
地域に住む人以外が来ることで、
何かが変わっていくのではないかと期待しています。
駅から離れた場所ですが、
ぜひ、つくし文具店を訪ねてみてください。
そして、まわりの住宅街をのんびり散歩してみてください。
何か新しい発見があるかもしれません。